情報システム部門をつくりませんか? - 中小企業の片手間仕事のWeb担当者が社長に宛てた手紙

※ これは、とある中小企業で片手間仕事でWeb担当者をやっている社員が、役員に宛てた手紙です。登場人物名は架空のものです。少し無理があるところもあるかもしれませんが、僕は彼の意欲を評価したいと思います。 情報システム部門をつくりませんか? まず始めに、私は会社を経営したこともありませんし、経営学を勉強したこともありません。しかし常日頃、どうしたら当社が良い方向へ向かうのかという問を持ち続け、いろい...

※ これは、とある中小企業で片手間仕事でWeb担当者をやっている社員が、役員に宛てた手紙です。登場人物名は架空のものです。少し無理があるところもあるかもしれませんが、僕は彼の意欲を評価したいと思います。

情報システム部門をつくりませんか?

まず始めに、私は会社を経営したこともありませんし、経営学を勉強したこともありません。しかし常日頃、どうしたら当社が良い方向へ向かうのかという問を持ち続け、いろいろと考えています。したがって、以下では一社員の立場からは一歩踏み込んだ意見を述べている部分はありますが、ご一読いただければ幸いです。

当社は、今非常に厳しい状況に立たされていると思います。不景気による消費者の商品の買い控え、材料原価の高騰など、理由は様々だと思います。

この現状を打開するには、これまでの当社の「前例踏襲」といった考え方だけでは対応しきれないと思います。当社の財務基盤がしっかりとしている時期に、当社の将来を見据えた基盤作り、組織改革等が必要になっていると思います。

ITの有効活用もそのうちの一つです。しかし、現在の当社のITに対する姿勢は非常に中途半端で断片的なものです。例えば、ホームページのリニューアル、メールマガジンの導入などの検討は、それぞれが独立したものとして考えるものではなく、本来トータル的に考えなければならないものだと思います。

昨年、ホームページのリニューアルには成功しました。出来上がったホームページの品質は高く、拡張性にも優れていると思います。

しかし、リニューアル自体と同等か、それ以上に重要なのが、管理・運用です。これは「ただ更新する」という機械的な作業を言うのではなく(それは最低条件です)、ホームページを如何に有効に活用できるかが重要になってくるのです。良い箱はできましたが、中身を「充実させる」、「効果的に使う」ことはできていないのが現状です。

メールマガジンを例に挙げると、メールマガジン自体は、あくまでホームページを有効利用するための外部ツールの一つに過ぎないのだと思います。メールマガジンはホームページへ顧客を誘導するのが一つの目的です。そして、多くの顧客を誘導できた後は、ホームページ内での更なる購買意欲の刺激、購買というゴールへのスムーズな誘導など、結局はホームページ内を如何に最適化できるか、と言った話になってしまうのです。

これを打開するために、プロジェクトチームを結成し、中身を充実させることが出来たとしても、それはその時期限定の充実に過ぎないのです。各商品の開発に終着点がないのと同様に、ホームページにもゴールはありません。常に「検証」「仮説」「実行」を繰り返し、成長させなければならないと思います。

これらの「検証」「仮説」「実行」は、Webマーケティング、インターネットビジネスのジャンルへの意欲を持つ人材が恒常的に取り組むべきものだと思います。世の中の商品に対する流行の移り変わりが激しいのと同様に、インターネットの世界の移り変わりも非常に激しいからです。

また、ある程度の専門的知識を持つ者が担当しなければならないのは、商品に関連する知識を全く持たない者が、当社の商品開発職を全うすることができないことと同様に明らかです。

こういった考え方は、インターネットを利用したサービス等に限ったことではありません。業務システムを初めとした、ITを利用した社内インフラの整備にも当然当てはまることです。

現状の当社のインフラ整備の取り組み方にも、私の知る限りでは大きな問題があります。過去のシステムのリプレースを念頭に置いたインフラ整備では、それ以上の発展は望めません。各担当者が「こうなったら便利だ」というミクロなものではなく、社内インフラを整備することで何をしたいのか、何ができるのかといった、企業活動における上層部分を描けていないのが最大の問題だと思います。

しかし、当然これらは簡単に描けるものではないのは分かります。企業の活動にゴールがないのと同様に、「何をしたい」というのは常に生まれてきます。それに対応するためには、企業活動の中で発生するデータを洗い出し、様々なシーンで、様々な見せ方ができるようなデータベースシステムを構築しておく必要があります。

これらの社内データベースシステム、インターネットを中心としたITを有効活用するためには、一時的なプロジェクトチーム、片手間な担当者では対応しきれない内容です。その為に、これらのジャンルを専門的に扱う「情報システム部門」を創設すべきだと思います。

ここには、当然人員の問題が発生し、追加の人件費を要するようにもみえます。しかし、考え方を変えれば決して無駄な部署ではないと思います。

例えば、それらの仕事を専門に取り扱っていれば、そのジャンルに関する人脈も増えるでしょうし、導入しようとしているサービスの種類、値段が適正なものかもある程度見極めがつきます。外部に発注する際に、無知が故の無駄な出費を避けられると考えられます。

ホームページリニューアルプロジェクト時に、私にWebに関する知識あったために、ある程度見極めができ、コストを下げられたことも一つの例です。「情報システム部門」があれば、こういったコスト削減が見込めます。

また、業務を効率化することで、無駄な残業をなくせれば、直接的に人件費が下がります。時間外費用のみではありません。私たち社員の勤務時間内の行動はすべてコストであると考えています。

一つの例を挙げると、ある商品に関するデータを整理するときに、普通にやると1時間程度かかる作業が、私の知識とツールを用いれば30秒で終わります。現状では、個人間の知識の差で大きな開きがある業務も、システム化することで埋められる差を埋めれば、それだけ時間を効率化できます。その時間を企業活動を発展させるための拡張的な取り組みに当てることが出来ます。「情報システム部門」があれば、こういった間接的なコスト削減が見込めます。

他にも、ホームページを有効に利用することにより、現状の各地域単位の得意先で割り振られている営業ではカバー仕切れない部分、つまり見えない不特定多数の潜在顧客への営業活動が行えることになります。さらに、営業活動のみにとどまらず、不特定多数の潜在需要を掘り起こす、現状の当社にはないマーケティング活動の一部も行えます。「情報システム部門」があれば、こういった追加の企業活動が行えます。

さらに、ホームページに訪れるユーザーの動きを分析することにより、コンテンツを最適化し、購買というゴールへの導線を引くことができます。「情報システム部門」があれば、こういった直接的な収益の増加も見込めます。

上記の内容はあくまで例ですが、「情報システム部門」を創設することは決して無駄なことにはならないと思います。

仮にこういった部署を創設するとなった場合、誰がやるのか、という大きな問題が発生すると思います。

もちろん、私がその職務に就きたいと考えています。なぜなら、当社で商品開発職に就いて数年という経験もありますし、Webに関する意欲も強いからです。さらに、商品開発部の伊藤氏も適任だと思います。我々には「当社を良くしたい」という共通の希望があるとともに、お互いの足りない部分を埋めあえる知識を持っています。具体的には、私はインターネット関係の知識に強く、伊藤氏はデータベースを初めとしたシステムインフラに対する知識が強いという状態です。つまり我々二人が情報システムの職務に就くことができれば、互いに相乗効果を与えられると期待できます。

当然、我々の抜けた商品開発部の穴を誰が埋めるか、という問題が発生します。しかし、現状の開発部の仕事は、ルーチンワークがメインとなっているため(そこにも大きな問題をはらんでいますが)、引継ぎをしっかりすれば、既存の商品の改良の穴は埋められる可能性があります。また、業務を効率化できれば、将来的に各個人の生産性も上がりますし、人員を適正に分配し直せる可能性もあります。

そして、「情報システム部門」においては、Webを使ったサービスなど、新たな収益を生むサービスを開発できる可能性があります。

結局は、抜けた穴のダメージと新規部門でのメリットの比較考量になるのだと思いますが、「情報システム部門」のメリットは、決して小さくないと考えます。

上記の理由から、当社は「情報システム部門」を創設すべきだというのが、私の考えです。

現在、伊藤氏と上記の内容を、より具体化した提案を検討しています。

Published 2009-01-22
Updated 2019-06-25