Claude Fable 5.1 と Mythos 5.1 が登場。コーディングで Opus 5 を再び上回り、コストは下がった

2026-09-02
40分で読了
更新: 2026-09-02
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目次

こんにちは。2026年9月1日(米国時間)、Anthropic から「Claude Fable 5.1」と「Claude Mythos 5.1」が発表されました。

6月に Fable 5 で Mythos-class が一般提供に降りてきて、7月には Opus 5 が「Fable 5 に迫る知性を半額で」という形で追いかけてきました。そこから1ヶ月あまりで、今度は Fable 側がもう一段先に進んだ、という発表です。

「.1」という控えめなバージョン番号ですが、ベンチマークの表を見て、僕は正直かなり興奮しています。特に実務に直結する Terminal-Bench 4.0 と CursorBench 3.2.0 の伸びが嬉しいところで、この記事でもそこを中心に読み解いていきます。もちろん僕の環境の Claude Code でも、すでに Fable 5.1 を選べるようになっていました。

公式アナウンスは、この2つのモデルを "the world's most advanced models for coding and knowledge work" と位置づけています。コーディングと知識労働のための、現時点で最も進んだモデル、という宣言です。この記事では 公式アナウンス をベースに、Fable 5.1 と Mythos 5.1 で何が変わったのか、Claude Code ユーザーにとってどこが嬉しいのかを整理していきます。

Fable 5.1 と Mythos 5.1 の関係

構図は Fable 5 と Mythos 5 のときと同じです。公式によると、Fable 5.1 と Mythos 5.1 は同じモデルで、違いは safeguards(安全装置)のレベルだけです。

  • Claude Fable 5.1 は一般提供。API と Claude の各プラットフォームから使えます
  • Claude Mythos 5.1 は同じモデルの safeguards を、サイバーセキュリティと生命科学の専門家向けに緩めたもの。後述する trusted access programs を通じてのみ提供されます

前回の記事で「Fable 5 と Mythos 5 は同じ基盤モデルで、違いは safeguards だけ」と書きましたが、その関係が 5.1 でもそのまま引き継がれています。Mythos 5.1 も safeguards がゼロになるわけではなく、緩められるのは対象領域のものだけで、それ以外の safeguards は残ります。Mythos-class の位置づけや名前の由来については Fable 5 の記事 をご覧ください。

今回の発表の3本柱は、価格・データ保持・safeguards

公式アナウンスは、性能の話に入る前に、顧客からのフィードバックに応えた3点を挙げています。

  1. 価格 - cache read(処理済みの入力を再利用するときの読み込み)の単価を 75% 引き下げ。典型的なワークロードで Fable 5 比およそ 25% 安く、エージェント的な作業では最大でおよそ 45% 安くなる見込み
  2. データ保持 - Enterprise Frontier Safeguards(EFS)という新しい仕組みで、データを Anthropic ではなく顧客側のクラウドに置く。zero data retention(データを一切保持しない契約)と同等のプライバシーを保ちながら、悪用対策は維持する。今秋から段階的に提供され、それまでは対象となる顧客は zero data retention で Fable 5.1 を使える
  3. safeguards - 誤検知(問題のないリクエストを止めてしまうこと)を削減。サイバーセキュリティ領域では誤検知が 60% 減り、ソフトウェアの脆弱性の発見にも使えるようになった。生物学は米政府と共同で構築したアクセスプログラムを用意し、近く科学者向けに登録を開始する

「性能は上がったが、使い勝手も価格も据え置き」ではなく、Fable 5 の公開後に顧客から寄せられたフィードバックに手を入れてきた、という構成です。それぞれ後の章で詳しく見ていきます。

ベンチマークは Terminal-Bench 4.0 と CursorBench 3.2.0 に注目

公式が掲載している比較表がこちらです。

Fable 5.1・Fable 5・Opus 5・GPT-5.6 Sol のベンチマーク比較表。Terminal-Bench 4.0 は Fable 5.1 が 55.8%、CursorBench 3.2.0 は 73.4% (出典:Introducing Claude Fable 5.1 and Claude Mythos 5.1 \ Anthropic

数字はすべて Anthropic 自身が公表した評価結果で、第三者による独立検証ではありません。脚注によると、Fable 5.1 は本番と同じ safeguards を有効にした状態で評価されています。safeguards が介入したタスクは、OSWorld 2.0 では Fable 5.1 と Fable 5 がゼロ点、AutomationBench では Fable 5 がゼロ点として扱われ、それ以外の介入ではサイバー系のタスクを Opus 4.8 が、生物学系のタスクを Opus 5 が代わりに完了した、とのことです。つまり Fable 5.1 と Fable 5 のスコアは、この扱いのぶん低めに出ている可能性があります。

Terminal-Bench 4.0 で Opus 5 を逆転

まず Terminal-Bench 4.0 です。ターミナル環境でエージェントとしてタスクをこなす力を測る評価で、公式の図でも「Agentic terminal coding」と分類されています。Claude Code の使い方にいちばん近いベンチマークだと僕は思っています。

モデルTerminal-Bench 4.0
Fable 5.155.8%(Mythos 5.1 は 60.9%)
Fable 542.0%
Opus 552.3%
GPT-5.6 Sol37.3%

Fable 5 の 42.0% から 55.8% へ、13.8 ポイントの上積みです。見逃せないのは、この表では Opus 5(52.3%)が Fable 5 を上回っている点です。7月の Opus 5 の記事で「Fable 5 に迫る知性を半額で」と書きましたが、Terminal-Bench 4.0 に関しては迫るどころか追い越していたわけで、Fable 5.1 はそこからあらためて先頭に立ち直した形になります。

Mythos 5.1 との差についても説明があります。両者は同じモデルなので、5.1 ポイントの差は「以前の精度の低いサイバー safeguards が介入したタスクのぶん」だそうです。つまり Fable 5.1 の 55.8% には、safeguards の介入で Opus 4.8 に切り替わったタスクの結果が含まれています。今回 safeguards が改善されたことで、この差はずっと小さくなる見込みとのことです。

CursorBench 3.2.0 は 73.4%

CursorBench は、AI コードエディタ Cursor の名を冠したエージェント的コーディングの評価で、公式の表では Terminal-Bench 4.0 と同じ「Agentic coding」に分類されています。

モデルCursorBench 3.2.0
Fable 5.173.4%
Fable 570.5%
Opus 570.0%
GPT-5.6 Sol67.2%

伸び幅は 2.9 ポイントと Terminal-Bench ほど派手ではありませんが、7月の時点で Opus 5 が Fable 5 との差を 0.5 ポイント以内まで詰めていたところを、あらためて引き離しました。公式に掲載されているコメント(SpaceXAI の機械学習担当ディレクター)によると、CursorBench 3.2 で max effort 時に 73.4% を記録し、特に自分の作業を検証する力に長けているため、難しいコーディングタスクを最初から最後まで任せられる、と評価されています。

そのほかの項目

  • Terminal-Bench-Science 0.1(エージェントとしての科学研究) - 24.7% から 52.6% へ、2倍以上。ただし標準誤差が ±3.5〜4.5 ポイントとされていて、幅を持って見る必要があります
  • AutomationBench(ビジネスワークフロー) - 17.1% から 31.4% へ。Opus 5 の 26.9% も上回りました
  • GDPval-AA v2(知識労働) - 1723 から 1853 へ
  • OSWorld 2.0(コンピュータ操作) - partial で 77.9%、strict で 41.7%。ベンチマーク側の2026年8月版のタスクで測定されているため、過去に公表された数字と直接比較できず、他社モデルの欄は空になっています
  • Humanity's Last Exam(学際的推論) - ツールなしで 60.9%、ツールありで 65.0%

数字の外側にある変化

ベンチマークの脇で紹介されている事例も印象的でした。投資会社 Millennium の社内システムで、100万回に1回程度しか起きないクラッシュがあり、4〜5年ものあいだ誰も原因を説明できなかったそうです。Fable 5 を含むどのモデルも見逃したこのバグを、Fable 5.1 は外部ベンダーのライブラリを逆アセンブルし、コアダンプと突き合わせて、ライブラリ側のバグにたどり着いたと紹介されています。

公式はこれを、近道をして質の低い成果物を出すのではなく、ソフトウェアの問題の根本原因を直せるだけ賢くなった、と表現しています。Opus 5 のときに「自分で確かめる力」が伸びたと書きましたが、その路線を Fable 側でもさらに押し進めた、という理解でよさそうです。

effort を下げると、Fable 5 以上の結果をずっと安く出せる

僕が今回の発表で、ベンチマークの数字と同じくらい大事だと思うのがこの点です。公式は、Fable 5.1 を Low や Medium の effort に設定すると、Fable 5 と同等かそれ以上の結果を、ずっと低いコストで出せると説明しています。

effort は、モデルが回答の前にどれだけ考え込むかを指定する設定で、low / medium / high / xhigh / max の5段階があります。上げるほど賢くなる代わりにトークンと時間を使い、下げるほど速く安くなります。公式のグラフは、横軸に1タスクあたりの平均コスト(対数目盛り)、縦軸にスコアを取り、effort ごとの点を線でつないだものです。

Terminal-Bench 4.0 の effort 別スコアとコスト。Fable 5.1 と Mythos 5.1 の各 effort が、Mythos 5 より左上(安くて高スコア)に並んでいる (出典:Introducing Claude Fable 5.1 and Claude Mythos 5.1 \ Anthropic

Terminal-Bench 4.0 のグラフには Fable 5 ではなく Mythos 5 が並んでいますが、読み取れることは同じです。Fable 5.1 は High(Claude Code の既定値)でおよそ 49% に達していて、Mythos 5 が Max で出した 45% 台を、1タスクあたり $10 前後、つまり Mythos 5 の Max($27 前後)の4割ほどのコストで上回っています。Low や Medium でも 40〜43% 前後で、比較表の Fable 5(42.0%)とほぼ同じ水準を $5〜8 程度で出しています。

CursorBench 3.2.0 の effort 別スコアとコスト。Fable 5.1 の Low が Fable 5 の High と同じ水準を3分の1程度のコストで出している (出典:Introducing Claude Fable 5.1 and Claude Mythos 5.1 \ Anthropic

CursorBench 3.2.0 のグラフは Fable 5 との直接比較です。ここははっきりしていて、Fable 5.1 の Low(およそ 66%、$3 弱)が、Fable 5 の High(およそ 66.5%、$8.5 前後)とほぼ同じスコアを3分の1程度のコストで出しています。Fable 5.1 の Medium(およそ 68%、$3.5 前後)は、Fable 5 の xhigh(およそ 68.4%、$11.5 前後)に相当します。Max 同士で比べても、Fable 5.1 は 73.4% を $10 弱で出していて、Fable 5 の 70.5%($17 前後)より高いスコアを、半分近いコストで達成しています。

これが実務で意味するのは、「Fable-class は高いから普段は Opus」という判断を見直せる、ということです。Fable 5 のときは $10 / $50 という単価の前で、日常のタスクに使うのは少し勇気が要りました。Fable 5.1 では、effort を下げれば Fable 5 相当の結果が Fable 5 の数分の一のコストで手に入り、難しいタスクのときだけ effort を上げればよい。後述する cache read の値下げと合わせると、「安く使いたいときはより安く、賢く使いたいときはより賢く」という方向に選択肢が広がった、と言えます。

既定値も押さえておきましょう。公式によると、Fable 5.1 の effort の既定値は Claude Code では High、Claude Cowork と Claude.ai では Medium です。Claude Code で変えたいときは、/model で Fable 5.1 を選んだ状態から effort の項目を左右キーで調整できます。サブスクリプションで使っている場合は料金ではなく usage(Rate Limit)に効いてくる話になりますが、方向は同じです。

後述する早期アクセス各社のコメントにも、effort に触れたものがあります。Red Hat は、試したすべての壊れたビルドについて、どの effort レベルでも根本原因を正しく特定したと報告しています。一方で、CursorBench の 73.4% は Max effort での数字です。比較表の最高値を出したいときは相応のコストがかかる、という面も忘れないでおきたいところです。

なお、ここで挙げたグラフの数値は目盛りから僕が読み取った概算で、測定そのものは Anthropic 自身によるものです。タスクの種類によってコストは変わるので、自分のワークフローで一度 effort を変えて比べてみるのがいちばん確実だと思います。

早期アクセス各社の評価

公式には22社のコメントが掲載されています。Claude Code ユーザーに関係が深そうなものを、要旨だけ紹介します。

  • Cognition の共同創業者は、Devin の Opus 5 トラフィックを公開初日から Fable 5.1 に移す、と述べています。Fable 5 と同等以上の結果をタスクあたりより低いコストで出し、新しい cache read の価格によって、コードレビューのように Opus に留めていたワークロードでも Fable-class が現実的になった、とのことです
  • Red Hat のエンジニアは、先ほども触れたように、Claude Code で試したすべての壊れたビルドについて、どの effort レベルでも根本原因を正しく特定したと報告しています。進捗報告が簡潔で追いやすくなった点も挙げられています
  • Every の CEO は、Opus 5 と比べておよそ2倍速く、使うトークンは半分だったと述べていて、Opus を日常のモデルにしている人には自然なアップグレードだと評価しています
  • Ramp のエンジニアは、機械学習の問題で38時間の無人実行を走らせたところ、過去の結果がラベルの不備によるものだと診断して修正し、6つの実験を並列で回して結果と次の一手を持ち帰った、という例を紹介しています
  • Shopify のエンジニアは、長時間の無人作業で筋を見失わず、自分で記録を取り、状況に応じて優先順位を組み替え、中断したところから再開できると述べています
  • Browserbase は、最難関のブラウザエージェント評価で Fable 5.1 が 82% のタスクを完了し、Opus 5 の 74%、Fable 5 の 57% を上回ったと報告しています。しかも、使ったトークンは Opus 5 と Fable 5 のどちらよりも少なかったとのことです
  • Jane Street の担当者は、以前のモデルは長く作業するほど追いにくくなったが、Fable 5.1 は長い多段タスクでも読みやすさを保っている、と述べています

いずれも各社それぞれの評価環境での報告で、条件をそろえた横並びの比較ではありません。それでも「根本原因にたどり着く」「長時間の無人実行に耐える」「トークンが減った」という3つの方向で報告が揃っているのは、実務での期待値を考えるうえで参考になります。

科学研究での成果

Claude Code の日常からは少し離れますが、Mythos-class の地力が分かる話なので簡潔に触れておきます。

  • 分子設計 - Mythos 5.1 は、オープンソースのタンパク質設計・構造予測ツールを使って、高い結合親和性を持つ binder(標的に結合するタンパク質)を設計しました。3つの標的では、Adaptyv Bio のタンパク質設計コンペに提出された最良の設計の10倍の親和性を示し、12標的を通じたヒット率はおよそ 50% だったとのことです。現在のタンパク質設計では 10〜15% が典型とされています
  • 計算解析とモデリング - Fable 5.1 は、NASA のマゼラン探査機が30年以上前に撮影した金星のレーダー画像をもとにニューラルネットワークを訓練し、金星の3分の1にあたる高解像度の標高マップを作りました。従来の 10〜20 km から 2〜3 km の細かさまで地形が分かるようになり、Creative Commons ライセンスで公開されています
  • 計算生物学 - Mythos 5.1 は、7つのオープンソースの深層学習モデルに対してカスタム GPU カーネルを書き、出力を変えずに最大 2.5 倍まで高速化しました。ゲノム全体の解析では GPU コストを 30〜60% 削減できる見込みで、この最適化はオープンソース化される予定です

3つ目は僕たちの仕事にも近い話です。公開されているソースコードだけを手がかりに、性能エンジニアのチームが数週間かける最適化を数日で終えた、という点は、コードベースのパフォーマンス改善を任せる場面を想像しやすいと思います。

安全性・セキュリティ・アライメント

前回同様、安全性についても厚く説明されています。System Card に詳細があるとのことで、ここでは要点だけ整理します。

  • 化学・生物 - Mythos 5.1 の能力は Mythos 5 を上回るものの、Responsible Scaling Policy(能力に応じて安全対策の水準を段階的に定めた同社の方針)で定めている一段上のリスク階層には達していないと評価され、Mythos 5 と同じ safeguards で展開されます
  • サイバー - safeguards を外した Mythos 5.1 は、これまでリリースした中で最も強いサイバー能力を示したものの、Frontier Compliance Framework の低いリスク区分に収まっているとのことです。Fable 5.1 の safeguards については、外部2組織と Gray Swan の自動テストで検証し、critical-severity のジェイルブレイクは見つかっていないと説明されています
  • エージェントとしての安全性 - 悪意ある要求の拒否率は Mythos 5・Sonnet 5・Opus 5 と同程度で、外部の prompt injection ベンチマークでは同社史上最も堅牢だったとのことです
  • アライメント - 自動行動監査で、ほとんどの指標で Mythos 5 より改善。不可能なタスクを与えられたときにテスト環境の外のリソースへ手を伸ばす傾向や、「これはシミュレーションや評価だ」と理屈をつけて行動を正当化する傾向、明示された制約を無視する傾向が、いずれも減っています。reward hacking(ズルをして報酬を得ようとすること)の試行率と成功率も下がったとのことです

一方で限界も開示されています。承認や auto-mode の分類器をすり抜けることが依然としてあり、非常に長いコンテキストの作業やマルチエージェント構成については監査の見通しが十分ではない、と書かれています。Claude Code で権限を広めに与えて自動運転させる場合は、この点は頭に置いておいた方がよさそうです。

safeguards の改善で、Claude Code の介入がおよそ 60% 減る

Claude Code ユーザーにとって、今回いちばん実感しやすい変化がここだと思います。

サイバーセキュリティでは、Fable 5.1 をソフトウェアの脆弱性の発見に使えるようになりました。防御側の作業、つまり自分たちのソフトウェアを安全にするための調査が通るようになった、ということです。この変更により、Claude Code のセッションあたりのサイバー safeguards の介入は、Fable 5 のときと比べて平均でおよそ 60% 減る見込みとのことです。ただし、ペネトレーションテスト(実際に攻撃を仕掛けてみて侵入できるかを確かめる検査)、エクスプロイトの生成(見つけた脆弱性を実際に突くための攻撃コードを作ること)、バイナリベースの脆弱性スキャン(ソースコードではなく、コンパイル済みのプログラムを解析して脆弱性を探すこと)といった dual-use(善用も悪用もありうる)のタスクは、引き続き Opus モデルにリダイレクトされます。

生物学では、初歩的な生物学や医療に関する問題のないリクエストで safeguards が反応する頻度が、Fable 5 公開時と比べて 85% 減ったとのことです。ただし生命科学の研究開発に関する問い合わせは引き続き Opus モデルへ回され、専門家向けには後述の Mythos 5.1 のアクセスプログラムが用意されています。

蒸留対策も強化されました。蒸留(distillation)は、高性能なモデルから能力を抽出して別のモデルを訓練する手法で、大量の偽アカウントを使って産業規模で行われることがあります。発表日以降に作成された新規の API アカウントでは、複数ターンの会話で Claude の thinking の記録を保ったまま過去のコンテキストを手動で編集することができなくなります。公開情報として知られていた蒸留の手口を塞ぐための変更で、既存のアカウントは現時点では影響を受けませんが、将来のモデルリリースからは全ユーザーに適用されるとのことです。会話履歴を自前で組み立てるような統合を作っている方は、Help Center の記事 を確認しておくとよいと思います。

データを自社のクラウドに置いたまま使える Enterprise Frontier Safeguards

EFS については、同日に 別の記事 で詳しく説明されています。企業で Claude を使っている方には関係の深い話なので、要点をまとめておきます。

背景にあるのは、Fable 5 から導入された30日間のデータ保持です。Fable 5 の記事 でも触れましたが、これは訓練のためではありません。不正行為から巧妙なサイバー攻撃、盗まれた認証情報の悪用まで、複数のセッションやアカウントにまたがる悪用を検知するには、各やり取りを個別に見て即座に捨てるのではなく、一定期間データを保持して相関を取る必要がある、という理由からでした。Anthropic は、企業のデータを明示的な許可なく訓練に使ったことはなく、今後もない、と明言しています。ただ、規制の厳しい業界ほど「データ保持のあるモデルは使えない」という事情があり、そこで顧客と一緒に設計したのが EFS です。

設計にあたっては、米国の大手銀行の CISO(最高情報セキュリティ責任者)が集まる ARC(Analysis and Resilience Center for Systemic Risk)や、Comcast、KPMG、Mastercard、Salesforce、Visa などと議論を重ね、対話の相手は Fortune 100 の4分の1、米国のすべてのグローバルなシステム上重要な銀行に及んだとのことです。そこで聞き取った要望と、それに対する設計は次の3点です。

  • モニタリング - 自動監視が注意を要するパターンを検知したら、そのシグナルは顧客に直接送られ、顧客側でレビューする
  • データの保管 - 監視に使う活動データは、顧客自身のクラウドアカウント(Amazon S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storage など)に、顧客自身の暗号鍵・アクセスポリシー・監査ログのもとで保管できる
  • 自動レビューと人手のレビュー - 自動システムが一定期間のトラフィックを分析し、攻撃的なサイバー能力や生物学的能力を開発しようとする試み、盗まれた・漏洩した認証情報の兆候といった深刻な悪用のシグナルを探す。フラグは顧客に直接届き、Anthropic の従業員による人手のレビューは不要

顧客所有のストレージ、顧客管理の暗号鍵、完全自動のレビューはそれぞれ opt-in(必要なものだけ有効にする方式)で、どれを有効にしてもモデルの挙動・API 料金・Rate Limit は変わりません。EFS 自体に Anthropic は課金せず、自社クラウドに保管する場合のストレージや読み書き、データ転送の費用はクラウド事業者から請求されます。Anthropic から直接使う場合も、AWS・Google Cloud・Microsoft Azure 経由で使う場合も、同等のコントロールが提供されるとのことです。対応先は Claude Code、Claude Enterprise、Claude Platform、Amazon Bedrock、Claude Platform on AWS、Google の Agent Platform、Microsoft Foundry です。

提供は段階的で、今秋の後半に広く利用できるようにすることを目標にしています。対象となる顧客は、EFS の準備が整うまで Fable 5 と Fable 5.1 を zero data retention で使えます。申し込みは 専用フォーム から受け付けています。

Mythos 5.1 のアクセス経路

Mythos 5.1 は、次の2つの trusted access programs を通じて提供されます。

  • Cyber Verification Program(CVP) - 現在は防御的なセキュリティ作業向けに、サイバー safeguards を緩めた Opus・Sonnet-class のモデルを提供しているプログラム。近いうちに Mythos-class も含まれる予定
  • Life Sciences Verification Program(LSVP) - 生命科学の専門家が、研究開発向けに設計された safeguards のもとで Mythos 5.1 を使えるプログラム。米政府と連携して最初の参加者が登録済みで、今後広げていく計画

現時点では米国の組織に限られていて、国内外のパートナーへの拡大を米政府と調整中とのことです。また、コードベースの脆弱性をスキャンして修正案を提示する Claude Security も、Mythos 5.1 で動くようになりました。

EU AI Act への対応で、出力に透かしが入る

見落としがちですが、僕たちのように文章を書く用途でも Claude を使っている人には関係のある話です。

Anthropic は2026年7月に、EU AI Act の「AI 生成コンテンツの透明性に関する行動規範」に署名しました。これにより、2026年8月2日より後にリリースされるモデルの出力には watermark(透かし)が入ります。検出 API を持たない人には見えず、出力の品質や内容には影響がなく、ユーザーや組織、会話の情報も含まないと説明されています。検出 API は規制当局・報道機関・研究者などを対象にプライベートプレビューとして提供が始まり、段階的に広げていく予定とのことです。

Fable 5.1 は当然この対象です。白黒をつける仕組みではなく「Claude が関わった可能性を数値として推定する」ものですが、そうした判定手段が存在することは、頭の片隅に置いておいてよいと思います。

料金と提供状況

料金は次のとおりです。

項目価格
入力(per 1M tokens)$10
出力(per 1M tokens)$50
cache read(per 1M tokens)$0.25(従来比 75% 引き下げ)

入力と出力の単価は Fable 5 から据え置きで、変わったのは cache read の単価だけです。それでも公式の試算では、2026年8月の4週間の実利用をもとに、典型的なワークロードでおよそ 25%、コンテキストとツール呼び出しの多いエージェント的なワークロードでは最大およそ 45% のコスト削減になるとのことです。後者では cache read がコストの大半を占めるそうなので、Claude Code で長いセッションを回す使い方ほど、この値下げが効いてきそうです。

API のモデル ID は claude-fable-5-1 です。Claude API に加えて、Amazon Web Services、Google Cloud、Microsoft Azure でも発表日から利用できます。Mythos 5.1 は前述のとおり、現時点では米国の組織に限られます。

Claude Code で試してみる

僕の環境でも、Claude Code の /model を開くと Fable 5.1 が選べるようになっていました。

Claude Code の /model 画面。Default は Opus 5 with 1M context で、3番目の Fable が Fable 5.1 として選択されている

一覧では Default が Opus 5(1M context)で、3番目の Fable が Fable 5.1 です。説明には「最も難しく、最も長く走るタスク向けの、最も能力の高いモデル」とあります。その下に Sonnet 5 と Haiku 4.5 が続き、Fable 5 は一覧には出てきません。以前のモデル名を使いたいときは --model で指定する形です。手元でまだ見えない場合は、アップデートしてから再起動してみてください。

claude update

Claude Code での既定の effort は High です。前述のとおり Low や Medium でも Fable 5 と同等以上の結果が出るので、/model で Fable 5.1 を選んだ状態から effort の項目を左右キーで調整して、作業の重さに合わせて使い分けてみてください。

なお、表示の可否やデフォルトの挙動は、プラン・provider・管理者設定によって異なります。まだ Homebrew や npm 経由で Claude Code を使っている方は、このタイミングでネイティブインストールに切り替えておくと、自動更新が効いて新機能への追従がスムーズになります。詳しい手順は Claude Code を Homebrew からネイティブインストールに切り替えたら快適になった話 にまとめてあります。

Fable 5 と Fable 5.1 の比較

主な違いを表にまとめておきます。

項目Fable 5Fable 5.1
料金(入力/出力・per 1M tokens)$10 / $50$10 / $50(据え置き)
cache read(per 1M tokens)従来価格$0.25(75% 引き下げ)
Terminal-Bench 4.042.0%55.8%
CursorBench 3.2.070.5%73.4%
AutomationBench17.1%31.4%
脆弱性の発見safeguards が介入利用可(エクスプロイト生成などは Opus へリダイレクト)
サイバー safeguards の介入基準Claude Code でおよそ 60% 減
データ保持公開時は30日間保持(安全目的)対象顧客は zero data retention(Fable 5 も同様)。今秋から EFS
API のモデル IDclaude-fable-5claude-fable-5-1

ベンチマークの数字は、今回の公式アナウンスの比較表にもとづいています。

ユーザーにとって、どこが嬉しいのか

ここまでの内容を、「自分の仕事にどう効くか」という視点で整理し直してみます。

1. コーディングのベンチマークが、はっきり伸びた

Terminal-Bench 4.0 で 13.8 ポイント、CursorBench 3.2.0 で 2.9 ポイントの上積みです。どちらも Opus 5 に追いつかれたり抜かれたりしていた項目で、公式の比較表に並ぶ4モデルの中で Fable 5.1 が再び先頭に立ちました。僕がいちばん嬉しいのはここです。

2. 同じ使い方で、コストが下がる見込み

入出力の単価は変わらないのに、cache read の値下げだけで典型的なワークロードでおよそ 25%、エージェント的な作業では最大およそ 45% 安くなる見込みです。さらに effort を Low や Medium に下げても Fable 5 と同等以上の結果が出るので、下げ幅はもっと大きくできます。Fable 5 のときに「使うたびにコストが気になる」と感じていた方には、いちばん現実的な変化だと思います。

3. safeguards の誤検知が減る

Claude Code のセッションあたりの介入がおよそ 60% 減る見込みで、脆弱性の発見にも使えるようになりました。セキュリティ寄りの調査で止められていた方には、素直にありがたい改善です。

4. 長時間の無人実行の報告が揃っている

早期アクセス各社の報告には、数十時間の無人実行や、複数のサービスにまたがる変更の追跡といった例が並んでいます。ベンチマークの数字以上に、この方向の報告が揃っていることが実務では効いてきそうです。ただし公式自身が、非常に長いコンテキストやマルチエージェント構成では監査の見通しが十分でないと認めているので、任せる範囲と権限は引き続き自分で決める前提です。

5. 企業利用でのデータの扱いが選べるようになる

EFS によって、データを自社のクラウドに置いたまま、zero data retention と同等のプライバシーで Fable-class を使う道が開かれました。社内規定の都合で最上位モデルを見送っていた組織には、検討し直す材料になると思います。

まとめ

Claude Fable 5.1 と Mythos 5.1 のポイントをまとめると、こんな感じになります。

  • Fable 5.1 と Mythos 5.1 は同じモデルで、違いは safeguards のレベルのみ。Fable 5.1 は一般提供、Mythos 5.1 は trusted access programs 経由
  • Terminal-Bench 4.0 は 42.0% から 55.8%(Mythos 5.1 は 60.9%)へ。Opus 5 の 52.3% を再び上回った
  • CursorBench 3.2.0 は 70.5% から 73.4%
  • effort を Low や Medium に下げても Fable 5 と同等以上。CursorBench 3.2.0 では Fable 5.1 の Low が Fable 5 の High と同じ水準を、3分の1程度のコストで達成(公式グラフからの読み取り)
  • Terminal-Bench-Science 0.1 は 2倍以上、AutomationBench は 17.1% から 31.4% へ
  • 入出力の単価は $10 / $50 で据え置き。cache read が $0.25(75% 引き下げ) になり、典型的なワークロードでおよそ 25%、エージェント的な作業で最大およそ 45% のコスト削減
  • サイバー safeguards の介入が Claude Code でおよそ 60% 減。脆弱性の発見が可能に(エクスプロイト生成などは引き続き Opus モデルへリダイレクト)
  • Enterprise Frontier Safeguards(EFS)で、データを自社クラウドに置いたまま zero data retention と同等のプライバシーを今秋から段階提供。EFS 自体は無料で、モデルの挙動・料金・Rate Limit は変わらない
  • Mythos 5.1 はタンパク質設計でヒット率およそ 50%、GPU カーネル最適化で最大 2.5 倍の高速化。Fable 5.1 は金星の高解像度標高マップを作成
  • 2026年8月2日より後にリリースされたモデルとして、出力に EU AI Act 対応の watermark が入る
  • API のモデル ID は claude-fable-5-1。AWS・Google Cloud・Azure でも発表日から利用可能

Fable 5 が出てから3ヶ月弱。Opus 5 に一度は追いつかれた Fable が、コーディングのベンチマークで Opus 5 を再び上回り、同時にコストと使い勝手のフィードバックにも手を入れてきました。上のクラスが降りてきた6月の驚きとは種類が違いますが、日々の作業に効く度合いでいうと、今回の方が大きいかもしれません。

僕もしばらくは Claude Code のモデルを Fable 5.1 に据えて使い込んでみるつもりです。Rate Limit との付き合い方も含めて、気づいたことがあればまた記事にまとめたいと思います。

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